「めっちゃおいしかった、また来たい」。糟屋郡新宮町の下府2区公民館で4月24日、こども食堂がオープンしました。
みんなでおいしく食べて心がホッとする居場所に、との思いから「ほっこり食堂」と名付けられました。町内で定期開催のこども食堂は初めてとなり、小中学生らを中心に約60人が集い、笑顔が広がりました。
「ほっこり食堂」を始めたのは、町内に住む保育士の安東輝美さん。昨年7月に町社会福祉協議会が開いた「こども食堂運営ボランティア養成講座」に参加したのがきっかけでした。保育士としてこども支援の強い思いがあったのと、自身の子育てでお世話になった地域への恩返しの気持ちから手をあげました。友人らに呼びかけて、これまで2回の食堂の試行を重ねて、24日の本番を迎えました。
メインの食事はカレー。朝から公民館の台所で準備を始めました。安東さんを中心に10人が料理など手伝いました。カレーの他にもゴボウ煮付けやサラダも作りました。食材の鶏肉は「トリゼンフーズ」会社が提供してくれたほか、知り合いの農家からはお米や野菜などが届けられました。オープン時間の午後4時ごろには、甘口と辛口のカレーがそれぞれ大鍋で出来上がり、室内に食欲を誘う匂いが漂ってきました。
最初のころは少なかった参加者も5時を過ぎると、友だちと5人、6人で来る小中学生らの姿が増えてきました。公民館の2部屋がいっぱいになる盛況となり、みんなテーブルについて、カレーをほおばり、話し声や笑い声が広がりました。おかわりに来るこどももあって、ご飯が足りなくなるハプニングも。用意した炊飯器3台をフル回転させてご飯を炊き、7時の終了時には、お米4升がなくなっていました。
「カレーは家庭と同じ味で、とてもおいしかった」などと、こどもたちは感想を書いて帰宅しました。この日は新宮町の桐島町長も顔を見せ、「こうした食堂が継続していって、町内にも広がっていくといいですね」と話していました。町社協の話では、講座をきっかけに他の自治区でも、こども食堂立ち上げ準備が進んでいるそうです。
安東さんがこども食堂を始めた理由はもう一つありました。安東さんの高齢の母親も北九州市でこども食堂を手伝っていたのですが、昨夏に亡くなりました。遺品にはエプロンとともに食堂での生き生きした母親の写真が出てきました。「こども食堂は、母にとっても楽しい居場所になっていました」と安東さん。こどもだけでなくお年寄りにとっても生きがいになるような場所をつくりたいと思ったそうです。
「ほっこり食堂」は毎月の最終水曜日に開催していくことにしています。参加費は、大人300円、高校生以下100円です。当面は公的援助はなく、参加費で運営していく予定です。「自治会の区長さんの理解があってこそ開催できました。将来的にはお手伝いして下さる仲間が増え、支え合いながら大人もこどもも安心して暮らせる地域づくりが目標です」と安東さんは話しています。
こども家庭庁が昨年発足して、全国的にこども食堂は増加傾向にあります。生活困窮世帯への支援だけでなく、最近はこどもの居場所づくりに重心を移しつつあります。福岡県でも342カ所で店開きしていて、ほっこり食堂は343店目になりました。